今回は『手首の痛みの原因』について解説していきます。
前回のひじ痛についての投稿と同様に、少々専門的な解説をしていきたいと思います。この内容を見ていただき、「痛みが長引く」「何度も同じところを痛める」など、お悩みの方々の助けになれればと思っています。
「手首の痛み=腱鞘炎」は間違い?!
手首を痛めた時私たちはよく「腱鞘炎になった」と言いますが、実はこれ、間違っていることが多いのです。もちろん腱鞘炎のこともありますが、実は手首は骨がズレて、痛む場合も多く、そういった場合『お医者さんに見せてもなかなか治らない』とか『そもそも診察の時にお医者さんに間違った伝え方をしている』なんてこともあります。手首は意外と複雑な作りをしているため、症状の種類も非常に多いのです。従って、症状を特定し正しく処置することが特に重要です。
手首痛の症状の種類
手首痛は非常に多くの種類がありますので、以下には主だった症状を記載いたします。
1.尺側手根伸筋腱炎、周囲炎(いわゆる腱鞘炎)
2.TFCC損傷
3.橈骨遠位端骨折
4.舟状骨骨折
5.有鉤骨鉤骨折
6.尺骨突き上げ症候群
今回の投稿では、このうち1~3を解説し、4~6については来週の投稿で解説しようと思います。
尺側手根伸筋腱炎、周囲炎
いわゆる『腱鞘炎』のことで、痛めた腱や箇所によって、どこが痛むか、どの角度だと痛むかは様々です。レントゲンででは異常なしと診察されることが多く、整形外科でもレントゲンで異常が見られない場合は、腱鞘炎と診断されることが多いです。
腱鞘炎の痛みの原因
主な痛みの原因は『手首の使い過ぎ』によるものです。手首は派手に転んだ等でなければ、『気づいたら痛い』場合も多く、使い過ぎが原因の腱鞘炎は、その症状として診断されやすいのです。また、治りにくいのも特徴で、手首は日常的に使わざるを得ない部位であるため、痛みを押して日常生活や仕事をし、結果数か月痛み続けたり悪化してしまう事さえもあります。
また、『気づいたら痛い』や『レントゲンでは異常が見られない』と言った特徴から、『TFCC損傷』や『舟状骨骨折』である場合も『腱鞘炎』と診断されるケースがあり、一般的に広く知られた怪我でありながらも、実はプロでさえも取扱い注意な怪我でもあるのです。
腱鞘炎の治療方法
基本的には『手首へ掛ける負担を減らす』これにつきます。こう聞くと、サポーターなどを思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、もっと重要なことは、『腱鞘炎を引き起こした日常動作を見つけること』です。仕事や、ご家庭、部活などで一定の動作をし続けた結果、手首を使いすぎてしまい腱鞘炎を発症することが多くあります。また、その原因となる動作は意外と無意識で行っているため、分からないことも多くあります。従って、整骨院・接骨院の先生と話しながら、どの動作が特に手首に影響を与えているのかを特定し、その動作を重点的に控えるようにしましょう。
TFCC損傷
プロ野球選手の楽天オコエ瑠偉がこの手術を受けたこともあり、最近何かと有名になっている手首の怪我の一つです。元々原因不明で、治療方法も確立されていなかったのですが、近年は治療方法が考案されてきており、オコエもその手術を受けて復帰しました。
TFCC損傷の原因
TFCCとは手の小指側の手と手首を繋ぐ靭帯のことで、ここが傷ついたり、断裂したりして痛みを生じます。こちらもなかなかレントゲンなどで特定が難しい怪我で、よく腱鞘炎と勘違いされている患者様がいらっしゃいます。物を持ったり、ドアノブを引いたりすると痛みが生じることが多いのですが、手のひらを上に向けると痛みが和らぐことがあります。発症割合でいうと、44歳以下が圧倒的に多く、若い人の怪我だと言うことが出来ます。
TFCC損傷の治療方法
現状直接的な治療方法としては手術のみとなっています。実際に前述したとおり楽天のオコエ瑠偉選手は損傷したTFCCを手術で治しました。ですが、これはアスリートの怪我の様に、症状が重い場合の対処で、日常生活で痛めた場合は自然治癒も効果があります。実際、当院でもTFCC損傷の患者様を治療しましたが、その時は湿布とテーピングで時間を掛けてじっくり治しました。自然治癒の場合はとにかく患部に負荷を掛けないようにすることが重要で、こまめにしっかりテーピングしてあげることが効果的なのではないかと当院では考えています。
橈骨遠位端骨折
元メジャーリーガーの松井秀喜選手が負った手首の大けがの一つとも考えられているのがこの『橈骨遠位端骨折』です。皆さんも分かるくらい手首には2本の太い骨が走っています。その内の親指側の太い骨が『橈骨』です。ご年配の方が転んで手首を痛めた時に発症していることが多く、その場合『橈骨遠位端骨折』だけでなく、複数の怪我を負っている場合も多くあります。
橈骨遠位端骨折の原因
先ほども述べたように転んで手首をついた拍子に、手首に強い負荷が掛かり、太い骨に骨折線が入ることが発症します。これはいわゆる『骨折』であるため、大きく腫れたり、強い痛みを生じたりします。
橈骨遠位端骨折の治療法
この骨折の治療方法は折れた後の骨のズレ方で大きく分かれます。折れた後の骨のズレが多少であれば、けん引しギプスで固定して4週間ほど安静にすると、ギプスがとれ、そこからリハビリ、と言った流れになることが多いです。一方、複数の怪我を負っている場合や、骨折後の骨のズレが大きい場合は手術を要することもあります。鋼線固定、プレート・スクリュー固定、創外固定法など、手術方法は様々で、症状によって使い分けます。
いかがでしたでしょうか、大きな骨折と腱鞘炎だけだと思っていた手首痛ですが、実は他にもさまざまな症状を引き起こす可能性があります。次回はTFCC損傷の様に、実は起こる可能性は十分にあるんだけど、腱鞘炎と勘違いされやすい怪我について解説していきます。
次回も宜しくお願い致します。
ふじと接骨院
院長藤戸慎一郎